作品解説

【あらすじ】

19世紀フランス、ロワール河近くの丘隆地帯に建つ「ざくろ屋敷」に、ある日、謎めいた夫人とふたりの男の子が移り住んできた。母子は、屋敷から離れず、密やかな生活を営んでいる。街の人々は美しい夫人の素性について噂をするが、誰もその過去を知ることは出来ない。  静かな、3人だけの美しい日々が季節と共に過ぎていく。しかし、ロワールの光に満ちたその生活には、常に不安の影が差していた。ある逃れられない病気から、夫人には死にゆく時が刻一刻と近づいていたのだ。

古くから「フランスの庭」と称えられるトゥーレーヌ地方の風光明媚な景色の中、夢のような母子の生活と、次第に死に近づいていく母親の様子が対照的に描かれていく。

【”ざくろ屋敷”とは?】

バルザックの生まれ故郷トゥール市に実在する館で、バルザック自身も滞在したことがある。1830年、パリが七月革命で騒然とするなか、バルザックは最初の愛人ベル二ー夫人とこの別荘を借りて過ごしていた。その後、バルザックはパリへと戻るが、愛する夫人との田園生活が忘れられず、「ざくろ屋敷」への再訪を願うが繁忙のためかなわず、またこの館を買い取りたいとさえ考えていたが、結局は実現しなかった。

バルザックの「ざくろ屋敷」での記憶は、文学的成果として残されることになる。短編『ざくろ屋敷』の舞台として用いられただけではなく、代表作 『谷間の百合』 にも再度この館が登場し重要な役割を果たしている。また、バルザックの他に、その後詩人のベランジェや歴史画の大家カザンが住んでいる。

今回は、実際に現在の「ざくろ屋敷」に取材を行い、また多くの歴史的資料を基にして、バルザックの愛したこの館を正確に再現することに成功している。

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